読書百冊意自通ズ覚書

読んだあと、何かしらの余韻を残していく物語たちを、みんなどんな風に読んでいるのだろう?The note of reading one hundred books makes you understand more clearly.

忠臣蔵とは何か

想像していたのとは結構違うところから書き出されていて、ちょっとびっくりした。 内容というよりも、構成部分のことだ。

 

 御霊信仰のことも、カーニバルのこともよくわかるし、曽我物語から入っていくのもうまい(納得できるし)が、いかんせんこの曽我物語についての記述が助長に過ぎる。

 だから内容は申し分ないのだけど、長過ぎちゃって中だるみというか、だらだらしてきてしまう。はっきり言ってしつこい。のだ。曽我物語のところを読んで疲れてしまい、本旨に行くともう気力も体力もなくなっている。

 

 カーニバルのところも、言いたい事はわかるけど、ちょっとパワーが足りない印象だ。エネルギーをその前の曽我物語のところで使い切ってしまったのではないか。

 でもそうなってしまうのはよくわかる気がする。細かい事をごちゃごちゃちまちまやっているうちに、最後のまとめで書くべきことも書いてしまったりして、いざという時にパワー不足になってしまうのだ。

 

 と、めたくそな評をしているが、なんとこの本は賞を取っている[1]

 丸谷の文章としてはイマイチな気がするけれど、一般的な評論と比べれば、とらえ方が多面的で、情報も多く、完成度が高いのだろう。世間的評価は高い本である。

 世間が評価するものってそんなものかもしれない。[2]

 

notes

[1] 第38回野間文芸賞受賞。(1985年)かの小林秀雄室生犀星も受賞した由緒ある賞。
[2]さらっと失礼なことを言っているが、すごい本である。念のため。
忠臣藏とは何か (講談社文芸文庫)

忠臣藏とは何か (講談社文芸文庫)