忠臣蔵とは何か
想像していたのとは結構違うところから書き出されていて、ちょっとびっくりした。 内容というよりも、構成部分のことだ。
御霊信仰のことも、カーニバルのこともよくわかるし、曽我物語から入っていくのもうまい(納得できるし)が、いかんせんこの曽我物語についての記述が助長に過ぎる。
だから内容は申し分ないのだけど、長過ぎちゃって中だるみというか、だらだらしてきてしまう。はっきり言ってしつこい。のだ。曽我物語のところを読んで疲れてしまい、本旨に行くともう気力も体力もなくなっている。
カーニバルのところも、言いたい事はわかるけど、ちょっとパワーが足りない印象だ。エネルギーをその前の曽我物語のところで使い切ってしまったのではないか。
でもそうなってしまうのはよくわかる気がする。細かい事をごちゃごちゃちまちまやっているうちに、最後のまとめで書くべきことも書いてしまったりして、いざという時にパワー不足になってしまうのだ。
と、めたくそな評をしているが、なんとこの本は賞を取っている[1]。
丸谷の文章としてはイマイチな気がするけれど、一般的な評論と比べれば、とらえ方が多面的で、情報も多く、完成度が高いのだろう。世間的評価は高い本である。
世間が評価するものってそんなものかもしれない。[2]
notes
[2]さらっと失礼なことを言っているが、すごい本である。念のため。