読書百冊意自通ズ覚書

読んだあと、何かしらの余韻を残していく物語たちを、みんなどんな風に読んでいるのだろう?The note of reading one hundred books makes you understand more clearly.

[外国]

夜はやさし 上下

フィッツジェラルド最後の長編小説[1]となってしまったこの『夜はやさし』(原題 "Tender is The Night")、なんとも悲しさを感じさせるタイトルである。 夜はやさし(上) (角川文庫) 作者: フィツジェラルド,谷口陸男 出版社/メーカー: 角川グループパブリッ…

愛は試練に満ちて―パーフェクト・ファミリー―

パーフェクト・ファミリーのシリーズで、初めて続きが気になる、と楽しみにしていた本書。 前作[1]から、問題が起きそうなまま終わってしまった、リビーとキャスパーという二人の夫婦の物語である。 この二人が、「幸せな結婚」というハーレクイン的結末のあ…

ユダヤ人と疎外社会 ―ゲットーの原型と系譜

ゲットーについて書かれたのが本書である。ユダヤ関係の本を連続して読むのなら、ゲットーは一度は勉強しておいていい題材だと思うので、適切な本だったと思う。 しかし、前作の『ユダヤ人と有史以来』[1]と同様、無教養(というか、教養うんぬん以前に、理…

ユダヤ人は有史以来 パレスチナ紛争の根源/上下

ユダヤ人について知りたいのでなにかありませんか、と恩師に尋ねたところ、薦められたのが本書と、ルイス・ワース著の "The Ghetto" であった。動機は忘れてしまったが、まとめて読んで知識を身につけようと思ったことは覚えている。 そもそも学校教育の現場…

シャーロック・ホームズ最後の挨拶

シャーロック・ホームズの作品もだいぶ読んでしまったが、いつ何時その作品をひも解いても、その楽しみというものが損なわれることがない。どんな時もホームズとワトソン博士に再び巡り会える楽しみを感じさせてくれる。だからこそ、世にはシャーロキアンな…

マイ・ロスト・シティー

冒頭の「フィッツジェラルド体験」で、本書の訳者・村上春樹がいかに優れた評論家でもあるか、証明されているように思う。作品を読む前に、その内容に驚かされ、感心させられてしまった。 むろん、タイトルに「体験」とあるように、極めて個人的な体験に基づ…

愛は望郷のかなたに―パーフェクト・ファミリー―

今回のパーフェクト・ファミリーは、前回のマックス編でちらりと登場していた男・デイビット編です。この人は恐らく始めの段階で登場しているのだろうけれど、覚えがない。ジョナサンの双子の兄としての認識しかなかった。 ハーレクイン小説だけあって、この…

熊を放つ/上下

読み終えるのに、とても時間がかかった本書。それというのも、殊に上巻の前半が非常に読みにくかったせい、である。 しかし、果たしてアーヴィングの文章が読みにくいのか、訳者の訳が読みにくいのか、判断つきかねるので、まだその結論は出さないでおくこと…

ソフィーの世界~哲学者からの不思議な手紙/上

哲学の本というのは初めて読んだ。この本、当時バカ売れしたベスト・セラー本だが、それにしては難しい気がする。まぁ、哲学の本なんだからある程度難しいのは当たり前か。 色々な哲学者の色々な、そして微妙に違う主張が続くので、途中でわけがわからなくな…

ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック

とても読み易い小説以外は、小説より そうでないもの、、、、、、、の方がずっと読み易い、と最近思う。 長い間ほとんど小説を中心に読んできたので、そういうことに気づかなかった。もっとも、それは単に自分の想像力がひんこん、、、、だからというのにす…

四人の署名

なかなか面白かった。 物語の後半部分の、犯人の動機に至るまでの経過というのには、いつもながら驚かされる。 なんだってこんな話――特にそれまで過ごしてきた土地がイングランドから遠く離れていることへの驚き――になっちゃうんだ?という。 そしてまた、今…

緋色の研究

新潮文庫でずっとシャーロック・ホーム ズのシリーズを読んでいたのだが、創元推理文庫でも出ていることがわかって探してみた。 手に取ってみるとなんと訳者が阿部知二なので、一も二もなくこちらで読むことにした。そしてやはり読みやすかった。 ここが読み…

バスカヴィル家の犬

シリーズ最長編がこの『バスカヴィル家の犬』である。 けっこうホームズって変人だよなと、回を追うごとに感じる。(もっとこう、高貴な紳士って感じなのかと思ってたのだ)世のシャーロキアン諸君は、ホームズのこの偏屈ぶりにノック・アウトされているのだ…

リア王

面白かったが、教養がなく&頭悪い(=理解度低い)せいで、けっこう読むのに苦労してしまった。 コーディリアが死んだことで驚いていたのに、リア王まで死んでさらに驚いた。 作中でケント伯が言っているように、とっくに死んでいるところの寿命を長くして…

大いなる遺産/上下

最も有名なディケンズの作品といえば『クリスマス・キャロル』であり、それ以外の作品で初めて読むのがこの『大いなる遺産』となった。 上巻の始め、主人公ピップが幼い頃、脱獄した囚人に脅されて、やすりとポーク・パイを届け、その後「囚人狩りの見物」に…

キャッチャー・イン・ザ・ライ

よくある話だけど、この『キャッチャー・イン・ザ・ライ』――ライ麦畑でつかまえて――も、何となく自分で考えていた話と、だいぶ違っていた。 いわゆる「青春の文学」として名高い作品だし、もちろん一度は読もうと試みた。ちゃんと十代の時に。 でもその頃出…

誘拐

一頁目をめくり、冒頭の「謝辞」の部分を読んで、この本がガルシア=マルケスの描く誘拐の「物語」ではなく、数々の人を苦悩と悲劇に陥れた、コロンビアで実際に起こった誘拐事件の記録である事を知った。 私は少なからず衝撃を受けた。なぜなら、誘拐事件と…

百年の孤独

大天使ガブリエルの名を持つ、ラテン・アメリカ文学界において最も偉大な作家の一人、ガブリエル・ガリシア=マルケスの作品の中で、最も有名にして大長編、「空前のベストセラー」[1]であり、1982年にノーベル文学賞受賞に至る作品となったのがこの『百年の…

十二の遍歴の物語

十二の短編の目次を読む前に見て、ガルシア=マルケスはまだ二冊目だけれど、好きなタイプの作家だと悟った。好感が持てる[1]タ イトルの羅列。タイトルに惹かれたまま、本文に入る。 始めに持った期待感、物語的世界(つまりガルシア=マルケスワールド)は…

ママ・グランデの葬儀

初のガルシア=マルケスの著作を、実際に図書館で借りるに至るには、丸谷の書評[1]の存在が大きい。丸谷はわりとラテン・アメリカ文学を、ガルシア=マルケス、バルガス=リョサ、ボルヘス、等の作家の書評を書いている。それで、ガルシア=マルケスに限らず…

プードル・スプリングス物語

未完のままチャンドラーがこの世を去ってしまった後で、後世のハードボイルド作家、ロバート・B・パーカーが後を引き継ぎ、完成させたのがこの『プードル・スプリングス物語』である。 プードル・スプリングス物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: レイモン…

アーサー王の死

これ以上ないくらい有名な、アーサー王の本を読もうと思ったきっかけは、下記の2つのマンガにある。 ひとつめは、高河ゆん著の『超獣伝説ゲシュタルト』。 このマンガに「ランスロット」が登場していて、他でもよく見かける名前だし、興味が引かれた。 ふた…

恐怖の谷

ドイル卿、加えて私の好きな翻訳者、阿部知ニ[1]氏。こういう組合せになると、訳がうまいとか下手とかいう事に気を取られなくていい。その先のところから始められる。 巻末の解説によると、 「内外を問わずドイルの長篇では『バスカヴィル家の犬』がもっとも…

愛は苦悩とともに─パーフェクト・ファミリー

ペニー・ジョーダンという作家は、ハーレクイン小説の作家なので、多くの作品を読んでいるわりに覚書には登場していない。 しかし彼女の作品の中でも、大型の長編小説が何作品かあり、これが通常のハーレクインシリーズとは違い「文芸書」と名打たれているだ…

シャーロックホームズの事件簿

翻訳された外国小説を、最近以前にも増して読んでいる。そのせいか、文章の良し悪しというものが掴めるようになってきた気がする今日この頃。 しかしその、文章の良い・悪いというのが、 1. 翻訳者の力量による 2. 原作者の文章力による のどちらなのかとい…

ホテル・ニューハンプシャー/上下

たいていの名作がそうであるように、この本もわかるようなわからないようなこと (それは物語を読み進めていくうちに次第に鮮明になり、しまいにはすっかり理解される)が冒頭にこと細かに――そう、たいてい執いくらい入念に書かれているもの なのだ、なぜか―…

大いなる眠り

フィリップ・マーロウの映画としては最も有名と思われる、“三つ数えろ(1946)”[1]の原作、『大いなる眠り』"The BigSleep" である。 ちなみにマーロウの一番の代表長篇といえば、やはり『長いお別れ』"The LongGoodbye" だろうか。この『大いなる眠り』もも…

ティファニーで朝食を

オードリー・ヘプバーン主演の映画、“ティファニーで朝食を”を思い出しながら読んだ。読みながら、ぼんやりとオードリーって可愛いなぁとイメージしていた。 でも訳者が書いているように、原作のホリー・ゴライトリーは"Moon River"なんて歌は歌っていないし…