読書百冊意自通ズ覚書

読んだあと、何かしらの余韻を残していく物語たちを、みんなどんな風に読んでいるのだろう?The note of reading one hundred books makes you understand more clearly.

[国内]

世界がわかる宗教社会学入門

「難しいことを易しく解説してくれる」橋爪先生に、『はじめての構造主義』[1]以来、まったくを以って大・感銘を受けていたので、この「宗教社会学入門」なんてまさに打ってつけ、という思いで手に取った。しかも「世界がわかる」おまけ付き。ちょうどユダヤ…

キッチン

思えば吉本ばななという人を、一躍有名にしたのはこの『キッチン』だった(はず)。 吉本ばなな好きな友人に「実は今頃になって初めて吉本ばななを読んだ」という話をしたら、ばななと言えば『キッチン』だ、と言われてそんな事を思い出した。 友人は年に何…

半日の客 一夜の友

二人の対談が100回を超えていた(!!)ということが今回わかり、本当に驚いた。対談は何冊も読んでいるし、相当やっているだろうということは考えるまでもないけれど、100回を超えているというのはさすがに脅威の数字だろう。 そして真に驚くべきは、回数も…

文学全集を立ちあげる

まずびっくりしたのは、丸谷があまりしゃべっていない、ということだ。 まぁ丸谷もお年だし、オブザーバーとして考えていたのかな、と思うけれど、それにしてもびっくりするくらいしゃべっていない。今までの対談では、だいたい丸谷の様々な知識や見解が展開…

挨拶はむづかしい

挨拶に関するエッセイだと勝手に思っていたが、何のことはない、丸谷が今まで実際にしてきた挨拶集だった。 しかし、驚くくらい様々な場面で挨拶をしている。作家も丸谷くらいになると[1]、挨拶する機会も多くなるのだろう。かなり色々な人と交流があるのだ…

アムリタ/上下

吉本ばななの前回の覚書、『うたかた・サンクチュアリ』より、個人的にはずっと面白かった。妹の元恋人・竜一郎という人がうまく書けていたし、主人公・朔美の雰囲気も良かったと思う。メッセージ性みたいなものも感じられた。 このお話の、霊が見えるように…

ホンモノの日本語を話していますか?

最近、「日本語について」書かれた本がちょっとしたブームになっていた。ブームの火付け役は『声に出して読みたい日本語』という本だったと記憶している。この本が売れ始めてしばらくすると、雨後の筍の如くに似たようなタイトルの本が続出した。日本語がど…

GO

直木賞作品である。映画にもなっている。 窪塚洋介主演で話題になったけれど、個人的にはそれがよくなかった。映画は観ていないけれど、CMの効果とは恐ろしいもので、どうしても主人公が窪塚洋介でしかイメージできないし、どうがんばっても桜井も柴咲コウに…

青い雨傘

つくづく思うのだけれど、丸谷は文章が上手い。こう、スッと入ってくる。 途中で少し難しい話題になっても、スッと入ってサラッと説明してまたスッと本論というか元に戻る、その辺りも絶妙だ。 文章の学問的なことはさっぱりなのだけれど、解説の鹿島茂氏に…

冒険者たち

グラスハートは1巻が出た時から読んでいた。当時もうすでにこの作家の本を読んでいなかったはずなんだけど……橋本みつるのイラスト[1]がよかったから手に取ったのだろうか。 冒険者たち―GLASS HEART (コバルト文庫) 作者: 若木未生,羽海野ちか 出版社/メーカ…

日本語のために

本書は昭和四十年代に盛んに取り上げられていた「国語改革」の動向というものを見、それについての丸谷才一氏の意見――当時の論調と氏の考える国語改革のあり方というもの――が書かれている本である。 日本語のために (1978年) (新潮文庫) 作者: 丸谷才一 出版…

子ども向け英語絵本。― 快読100万語!ペーパーバックへの道

この本に従って最近イロイロ手を付けている。 と、いっても洋書は高いし、とにかくたくさん読むことがポイント。 そこでちょっと面倒だったけど、母校の大学図書館で借りて、もりもり読んでいる。(本書を読んだ人はわかると思うけど、とりあえず多少は英語…

ものぐさ精神分析

かなり昔に中々面白いからと親に勧められた本である。確か、高校生の時だったと思う。 理解の授業でダーウィンの進化論とか、相似器官、相同器官をやっていて、キリンの首が長くなったことについて話している時に、「象は鼻が長くなりたい、と思ったから長く…

太宰治・人と作品 1

恩師に借りた本。この清水書院のCentury Booksというのは作家についと作品について書かれたシリーズで、全38冊あり、恩師は全て持っているそうだ。さすがです。 授業で使う(勉強する)ために若い頃買ったらしい。確かに授業で使えそうで、ためになる。そん…

オンリー・ミー ~私だけを~

友人が貸してくれた本なのだが、 けっこう長いことほっぽり出してあって[1]、次に会う時までに読み終わらねばならぬ!と息せき切って読み終えた。なぜなら、前半はいまいちだからだ。 しかし後半はすごく面白くて、電車の中で何度も肩が震えてしまった。ま、…

無意識の構造

個性的であるとか文学的であるとかいうことをまったく考えなければ、河合隼雄はもの凄く文章が上手である。そう深く思わせる本だと思う。 とても難しい内容なのに、実にわかりやすい。丁寧に説明されているし、何より文体が、というか文章そのものが軽い。の…

レヴィ=ストロース

レヴィ=ストロースが亡くなったらしい。100歳……ということは、今年生誕100年の太宰と同じ年ということか。 フランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースが死去、100歳 - CINRA.NET レヴィ=ストロースの著作は読んだことがないけれど、高校生の時、橋爪…

子どもの宇宙

「子ども」とタイトルにもあるように、子どもについて書かれている本なので、子どもための児童文学書の引用がすごく多く、自分が全然読んでいないことにびっくりした。 タイトルだけは知っているものから、児童文学の世界では有名らしいけれど全く知らない本…

坊っちゃん

映画やTVなどでずいぶん映像化されているので、どうもそのイメージが強かったよう。そのどれひとつとして見たことはないのだけれど、断片的な映像を見て誤った情報としてインプットされていた。(それはインプットする時、自分で間違えていただけ) だって山…

レキシントンの幽霊

本格的な村上春樹の小説(短編集だけど)の覚書は初めてじゃないだろうか?まあそれだけ『ねじまき鳥クロニクル』の後のスプートニクなどが耐えられなかった[1]ということだろう。 この本を読む気になったのは、村上作品を読まなくなってしまう前の短編集だ…

イデアマスター―GLASS HEART

大まかにカテゴライズして、このグラスハートというシリーズは、「若木未生の中では一番好きな作品」で、とりあえず「出たら読む」に属している。藤本ひとみでいうところのKZ[1]です。この作家のメイン作じゃないんだけど、自分的にはヘタなメインよりこっち…

二十世紀を読む

山崎正和氏は本書で初めて知ったのだが、この人、すごい。大学院教授であり、劇作家ということ。評論の専門家らしい。 基本が、というか、ルーツが「劇作家」という、ひじょうに文学寄りの人なので、感覚的にも知識的にも、丸谷と相性抜群なのかもしれない。…

小学生に授業

国際日本文化研究センターの教授が、小学生に自分の専門分野に着いて講義した授業記録が本書だ。 この『小学生に授業』をするという発想が面白いと思う。どんなに高名な大学教授でも (国際日本文化研究センター教授は、皆世界的権威ばかりらしい)「小学生…

'THE SCRAP' 懐かしの一九八〇年代

村上春樹、覚書初登場。つまり、この覚書を始めてから一度も村上春樹を読んでいなかったということになる。ちょっと驚きの事態だ。[1] テーマごとにいちいちコメントしていると長いものになってしまうので、ここではいくつかピックアップして感想を書きたい…

衝撃的なあまりに衝撃的な - 氷室冴子氏の訃報

氷室冴子さんが逝去した。 訃報:氷室冴子さん51歳=作家 ニュースを知った友人からのメールで知らされた。 氷室さんの小説は、私にとって小説を読むこということの原体験だった。 ここで語るにはあまりに思い入れがありすぎて、多くは語れないけれど、本当…

桜もさよならも日本語

国語読本[1]などという、何やら堅苦しい本なのに、さすがに丸谷、分かりやすく、興味深く書いて呉れた。 こんなに入り込んだ内容なのに、読んでいる間、全然立ち止まらずにすんなり進めるのは丸谷の手腕の賜物だろう。本当にこの人は文章が上手い。ほとほと…

世界の七不思議

世界の七不思議という本を、深く考えずに教養でも身につくかと思って手に取ったら、建物のことばかりが書かれていた。世界の七不思議って、建築物のことを言う[1]のだそうだ。知らなかった。 七不思議というとナスカの地上絵とかピサの斜塔だと思っていたけ…

日本語で一番大事なもの

すごい。としか言いようがない。 大野晋もすごいのだが、この人は自分の畑の話なので(それでもその分析や発想・発見、切口などなど、すごいのだろうけど)置いておくとして、丸谷である。 アナタは何者?だって研究対象はジョイス[1]だったはず。 以前、国…

ヴィヨンの妻

勝手に『ヴィヨンの妻』は中編小説だと思っていた。なぜなら、文庫の厚さが中編くらいだったから。短編だったのか。 太宰は短編の作家なのだと、ここまできてやっと納得した。(あんまり考えていなかった)おまけに、その短編というのが、同じような話――つま…

晩年

総じて面白かった。 前回[1]の「富嶽百景」「東京八景」「帰去来」「故郷」と併せて、この「思い出」でさらに太宰のことがよくわかることができた。 「魚服記」もよかった。しかしキリシタンものはユダと併せて苦手なので、大河ドラマ風に想像して読んだ。そ…