読書百冊意自通ズ覚書

読んだあと、何かしらの余韻を残していく物語たちを、みんなどんな風に読んでいるのだろう?The note of reading one hundred books makes you understand more clearly.

シャーロック・ホームズ最後の挨拶

シャーロック・ホームズの作品もだいぶ読んでしまったが、いつ何時その作品をひも解いても、その楽しみというものが損なわれることがない。どんな時もホームズとワトソン博士に再び巡り会える楽しみを感じさせてくれる。だからこそ、世にはシャーロキアンなる人々が存在しているに違いない。

シャーロック・ホームズ最後の挨拶 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズ最後の挨拶 (新潮文庫)

 
 ホームズの探偵小説を読む楽しみというのは、作品そのものが面白いということもあるけれど、19世紀当時のイギリス、ロンドンを想像しながら読むのが、またその愉しみの一つである。
 
 今回の短編集で特に注目すべきは、やはり8編目の「最後の挨拶」だろう。ホームズ愛読者をして、これが最後だと思うと寂しさを感じる。
 けれども訳者が解説で言っているように、ドイルはホームズに「最後の挨拶」は述べさせなかったし、60歳(!)になった彼は「少しも衰えを見せ」てはいないのが嬉しい。
 まだまだこれから、かねてからの念願だった養蜂をし、読書を楽しみ、時折、今までと変わらぬ怜悧な瞳を閃かせ、素晴らしい英知を以て、誰も解き明かせぬ難事件を解決しているであろう彼の姿を、遠く見つめる思いでこの本を閉じることができる。
 
 20世紀最高の名探偵、シャーロック・ホームズ氏に敬意を表して。