読書百冊意自通ズ覚書

読んだあと、何かしらの余韻を残していく物語たちを、みんなどんな風に読んでいるのだろう?The note of reading one hundred books makes you understand more clearly.

緋色の研究

新潮文庫でずっとシャーロック・ホーム ズのシリーズを読んでいたのだが、創元推理文庫でも出ていることがわかって探してみた。

 手に取ってみるとなんと訳者が阿部知二なので、一も二もなくこちらで読むことにした。そしてやはり読みやすかった。

 ここが読みやすいポイント!とか、読んでいる最中に他のものと比較して「すごく読みやすい」というような感じではないのだが、やはりすごくよみいい、、。どうしてなのかわからないのだけれど。文章にクセがないないのだろうか?

 とにかくわかりやすいとうことは言えると思う。細かいところもわかりやすい。だから、わからないと言っていたマーロウ[1]も、阿部知二の訳だったらよくわかったんだろうなぁと思う。

緋色の研究 (創元推理文庫 101-5)

緋色の研究 (創元推理文庫 101-5)

 

 余談だが、阿部知二をいいな、と思ったのは、エミリ・ブロンテの『嵐が丘』だった。はじめ、世界観が陰惨そうなイメージに、嵐が丘を読むのが嫌だった。野性味を通り越して獣っぽいヒースクリフも嫌で(ひどい)、とにかく 読み切れそうな本じゃなかったので、気乗りしなかったのだ。途中で挫折して、下巻まで読めないかもしれない、と思って上巻しか買わないでいたくらいだ。

 ところが読み出したら案外スラスラと読めて、下巻もすぐに買って読んでしまった。相変わらず設定は好きにはなれないけど――今でもちょっと個人的好みからいって面白いとは思えない――読みやすいから読み切れたんだな、と思った。

 その後いくつか阿部知二訳の本を読んで、ますますこの訳者はいい。と思うようになった。余談終了。

 

 この『緋色の研究』が初めの物語だと知らなかったので、ホームズとワトソンの出会い編ということでびっくりした。

『バスカヴィル家の犬』[2]の覚書で、 ホームズはイメージしていたような紳士ではなくて、けっこう変人・偏屈者だった、という感想を書いたけれど、この本では更に(正確には逆)その偏屈ぶりが顕著だった。

 解説曰く、人物像を描き出すことに力を入れているそうなので、なるほどホームズの特徴が顕著で余計にそう感じるのだろう。いや、かなりの変人です、ホームズ。

 この話自体は、面白かった。特にIIからの、犯人の過去の話のところがすごく面白くて、久々に早く先が知りたくてあせって読んだほどだ。

 ユターから逃れたルウシーがどうなるのか、もうドキドキもの。特に一ヶ月の猶予をもらってから、毎日一日ずつ日にちが減るところなんて、鬼気迫る。

 ジョン・フェリアにも同情し、この親子、幸せになってほしい、などと感情移入しまくりだった。

 

 なんだかホームズ&ワトソンとは全く関係ないところで盛り上がってしまったけど、面白かったし、やはり阿部知二はいい。話がわかりやすい。モルモン教のところなんて、他の訳者じゃ、たぶんよくわからないところも出てきたと思う。

 

 というわけで、次回も引き続き阿部知二訳のシャーロック・ホームズ『四人の署名』といこう。

 

Original: "A Study in Scarlet", 1887  

 

notes

[1] 覚書『大いなる眠り』

  [2] 覚書『バスカヴィル家の犬』