バスカヴィル家の犬
シリーズ最長編がこの『バスカヴィル家の犬』である。
けっこうホームズって変人だよなと、回を追うごとに感じる。(もっとこう、高貴な紳士って感じなのかと思ってたのだ)世のシャーロキアン諸君は、ホームズのこの偏屈ぶりにノック・アウトされているのだろうか。……。
謎解きとしては特別目新しいものはなかったが、話の構造としてはけっこう凝っている。
読んでいる間中、ずっと、以前行った[1] Baker St.にあるシャーロック・ホームズ博物館の部屋を思い出し、あの部屋で語り合うワトソン&ホームズ、というイメージで読んだ。そういうオプションがあると、余計に楽しく読めるというもの。
ということは、例えば太秦の撮影所に行くと、鬼平[2]もより楽しく読めるのだろうか。どうせなら、鬼平よりプリンス・エドワード[3]島がいい。平安京の吉野[4]のあたりとかもいい…鳥羽[5]とか。
これも旅と読書の醍醐味というやつだろうか。
Original: "The Hound of the Baskervilles", 1901
notes
[1] 英国に旅行した際、ホームズの家を再現したベーカー街にある「シャーロック・ホームズ博物館」に行った。ここでホームズとワトソンが……などと思うと、中々楽しめる博物館。
[3] モンゴメリ著の『赤毛のアン』が住んでいる、カナダの東海岸、セントローレンス湾に浮かぶ美しい島。アンを読んだ人なら、一度は行ってみたいと思うはず。
[4] 大大大好きな氷室冴子著『なんて素敵にジャパネスク』の主人公・瑠璃姫が超美形幼馴染の吉野君と幼少を過ごした地。謀反を起こし深手を負った律師・唯 恵(吉野君)を逃がし、自身も重傷を負った瑠璃姫が、雪の美吉野で快復した吉野君と再開するために待ち続けるシーンは静謐で物悲しく、美しい。ああ、泣ける。
[5] これもジャパネスク。帥の宮に川に落とされた瑠璃が、守弥の計らいで身を隠した高彬の別荘・鴛鴦殿がある所。こうして思い出すと、この本つくづく面白い。