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直木賞作品である。映画にもなっている。
窪塚洋介主演で話題になったけれど、個人的にはそれがよくなかった。映画は観ていないけれど、CMの効果とは恐ろしいもので、どうしても主人公が窪塚洋介でしかイメージできないし、どうがんばっても桜井も柴咲コウにしか思えないのだ。
読んでいる間、ずっと「広い世界を見るんだ」(P.15)という窪塚洋介の声が聞こえる気がした。つまり、杉原=窪塚100%、になってしまったのだ。そしてそれはあまりいいイメージではなかった。残念ながら。
加えて1を読んだ時、描き方が非常に村上春樹っぽいな、と思ったら――チャプター1なんて『風の歌を聴け』の冒頭にすごく似ているーー友人曰く、「金城一紀ってすごい村上春樹ファンらしいよ」とのこと。脱力。
ということが始めにあったので、作中の「そういえば『長いお別れ』の中で、フィリップ・マーロウが言ってた」(p.184)とか「フィリプ・マーロウなら、うまいへらず口を叩いて……」(p.186)なんていう科白が、どうも背後に村上春樹[1]を感ぜずにはおれなかった。
そういう意味で、素直にこの小説を読むことができなかったように思う。最初から何となくナナメに入って30℃だったところが、終わる頃には180℃ギリギリくらいの歪んだ視線で小説を捕らえてしまった。
こんな先入観、いらないものだとは思うんだけど。
notes
[1] 村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』が、チャンドラーの『長いお別れ』をベースにしているというのは、わりと周知のことだと思うのだが。