読書百冊意自通ズ覚書

読んだあと、何かしらの余韻を残していく物語たちを、みんなどんな風に読んでいるのだろう?The note of reading one hundred books makes you understand more clearly.

衝撃的なあまりに衝撃的な - 氷室冴子氏の訃報

 氷室冴子さんが逝去した。

 訃報:氷室冴子さん51歳=作家

 

 ニュースを知った友人からのメールで知らされた。

 

 氷室さんの小説は、私にとって小説を読むこということの原体験だった。

 ここで語るにはあまりに思い入れがありすぎて、多くは語れないけれど、本当に悲しい。ただ、悲しい。

 亡くなるということで、これほどの衝撃を受ける「作家」は氷室さんのほかに、村上春樹くらいしかいないだろう。

 

 氷室冴子の小説は、本当に面白かった。

 いわゆる少女小説というジャンル場で活躍された人だけれど、その文学的素養はかなり高く――国文科出身でもある――表現はくだけた少女向けの文章であるけれども、構成も背景もかなりしっかりしたものだった。だからこそ、表面上は「少女」小説であっても、「小説」そのものとして面白かったのだと思う。

 

 個人的に一番好きなのは『なんて素敵にジャパネスク』だ。最近少女小説や漫画などで平安朝もの も多いけれど、この小説が魁だろう。平安朝の話は本当によく見かけるけれど、これだけ古典に親しんだ作者の書いたこの作品以上のものはないと思う。素養が 違うし、ゆえに内容も自ずから確かなものになる。そういう素地を基に展開されるドラマには、小説の醍醐味が詰まっていた。帥宮編なんて、本当にドラマだったよなーと思う。

 

 それ以外でも、『クララ白書』シリーズとか、『なぎさボーイ』とか(私は渚はあんまり好きじゃなくて、北里のが好みだったけどさ)、本当に本当に面白かった。

 最近は新しいお話も読めなかったけれど(闘病していたんだな……)、これから先、全く読めなくなると思うと、残念でならない。

 

 謀反を起こした幼馴染の僧侶を救うため、袈裟を引っかぶって吉野君と反対方向に馬を走らせて落馬し、どこもかしこも骨折して、養生のために雪の降る吉野で吉野君を待つ瑠璃姫。迎えに来る高彬。

 狙いすましたように「人妻ゆえに」なんてお歌を送ってくるのんきな鷹男の帝。

「命あってのものだね」と豪語する煌姫、おたおたする守弥。

 綾姫と共に死のうとする帥宮を救出する瑠璃姫。

 

 氷室さんの訃報を聞いて、色々思い出した。

 一生忘れないシーンだと思う。