ものぐさ精神分析
かなり昔に中々面白いからと親に勧められた本である。確か、高校生の時だったと思う。
理解の授業でダーウィンの進化論とか、相似器官、相同器官をやっていて、キリンの首が長くなったことについて話している時に、「象は鼻が長くなりたい、と思ったから長くなったんだという面白い説が書かれた本」と教えてもらったのだ。そうそう。ついこの間、今この本を読んでいると言ったら同じようなことを言っていたので、間違いない。
どうもその部分は、「擬人論の復権」の中の、「……ある生物は他の生物に寄生することをこの地球上で生きる一番いい方法だと思っているのである」(P.168)辺りのことらしい。
また、「鼻あるいは首を長くのばそうという確固とした内在的決意に導かれている」(P.169)とも書かれている。
それはともかく、中々面白い本だった。
しかし、内容の重複について著者自身あとがきに書いているけれども、その通り本当に重複しているところが多い。重複のお陰でフロイトについて少しわかった気もするけれど。今までユング派の河合隼雄の本を多く読んでいたので、フロイトについてはよく知らなかったのだ。
それにしても、フロイトって本当に性的なことばかり言ってるんだな……重複しているせいでそう感じるのかもしれないけれど……よくフロイト=セックスとか言われてるけど、成程、これじゃあそう言われても仕方ない。
日本の近代を精神分裂病者と見立てて考える、という試みは非常に面白いと思った。わかりやすいし、納得できる部分も多い。
中盤はひたすら精神の性的解釈とでもいうべき理論ばかりだった。まァフロイトをベースにしているから仕方ないというか当然というか……
重複が多いので、あとがきで著者自身が言っているとおり
「日本近代を精神分析する」「国家論」「性的唯幻論」「セルフ・イメージの構造」「時間と空間の起源」
だけを読めばいいかもしれない。
しかし、この人の思考のベースになっている「共同幻想」というものについては、ひとつひとつ読んでいったほうがずっとよくわかるだろう。何度も繰り返し出てくるから。
「自己嫌悪の効用――太宰治『人間失格』について」は、共感する部分が多かった。
みんな太宰を認めてあげるというか、あのデストロイヤーぶりに晦まされてしまうというか、けなす人はいない(少ない)気がするけれど、『人間失格』なんかには否定的な立場だったりするので、ここで同意見の人がいて、けっこうスッキリした。そうだよ、葉蔵って弱っちいナル君だよ、という。
それから、非常に納得させられたのは「自我構造の危機」の中で近代的自我について書かれている部分。(P.279)長いので引用は差し控えるけれど、とても納得できた。
本書は以下続巻があるので、それも近々読みませう。