子どもの宇宙
「子ども」とタイトルにもあるように、子どもについて書かれている本なので、子どもための児童文学書の引用がすごく多く、自分が全然読んでいないことにびっくりした。
タイトルだけは知っているものから、児童文学の世界では有名らしいけれど全く知らない本まで、取り上げられているのは実に様々だ。私が読んでいたのは『ノンちゃん雲に乗る』くらいではなかろうか。ううう…。
あちらの世界とこちらの世界ということが、当たり前に書かれている。基本的に「あちらの世界」というものに抵抗はないタイプなので、全くすんなり受け止めてた。
そして改めて「あちらの世界」を提示されると、ある種の小説に惹かれる時、その小説や物語が持つ共通点があるとすれば、それはみんな「あちらの世界」を持っている物語、描かれている物語なのではないか、と思った。[1] 村上春樹、安部公房、ジョン・アーヴィング、ガルシア=マルケス……「ある種」の物語。
読んでいて、卒論(村上春樹論)に取り組んでいる頃に読んでいれば、と思うところも多かった。
殊に、P.113 の通路ということについて、『トムは真夜中の庭で』[2]に出てくる裏庭ドアは、ふしぎな世界につながる通路だと書かれているけれど、これってもろ『ねじまき鳥クロニクル』の井戸じゃないかと思ったり、「3. トリックスター」(P.148)では、羊男=トリックスターだよなと思ったり。
しかし、まあ文学的見地を離れてみたとしても、もし親になったらこういう本を通してまた勉強するのも、大切だと感じさせられた。
子どもを理解する努力をしないとね。
子どもはわりにすぐカンタンに「あちらの世界」に行ってしまうこともよくわかったしね。
notes
[1] ガルシア=マルケス『十二の遍歴の物語』のところで好きなタイプの作家だと言っているけれど、この辺のことだろう、この「タイプ」ってのは。
[2] ここで『ねじまき鳥クロニクル』の真夜中の庭で、デコボコ男二人組が穴を掘っているのを思い出している。「真夜中の出来事」だったか。