イデアマスター―GLASS HEART
大まかにカテゴライズして、このグラスハートというシリーズは、「若木未生の中では一番好きな作品」で、とりあえず「出たら読む」に属している。藤本ひとみでいうところのKZ[1]です。この作家のメイン作じゃないんだけど、自分的にはヘタなメインよりこっちの方がデキもいいし面白いじゃん、という。
それが証拠(?)にあとがきに
「(グラスハートは)ファンタジーにくらべて、ぶっちゃけ売れない。人気のあるファンタジー作品の半分とか三分の一の部数しか出ないので、グラスハートを書く暇があればファンタジーを書けという声も当然あったのですが」(p.252)
とある。
私なんかからすると、ファンタジー(主にオーラバスター[2]を指していると思われる)よりこっちのが断然面白かった。まあ「当時(中略)ファンタジーものが流行していて」という、時代の流れみたいなものもあったと思うけど。それに、書いていたレーベル(コバルト文庫)のターゲットが、こういう話よりファンタジーが好きな世代だったとか、そういうことも。
そういう時代背景があったのはあったとして、しかしそれを抜きにしても色んな意味で、ファンタジーよりグラスハートの方が出来がよかったと思うよ、当時も今も。
という理由と、それから一番最初のイラスト、橋本みつるの絵!!もうこれが圧倒的によかった。
若木未生の文章とか台詞とか展開の癖を見事に打ち消してくれる、強烈な個性のイラストだった。作者独特の表現はなくなったわけではないものの、橋本みつるの絵で読むと全然気にならなかった。[3]
もしグラスハートのイラストが橋本みつるじゃなければ、私は最後までこの作品を読むこともなく、こうして感想を書くこともなかったかもしれない。
というわけで、新イラスト担当の藤田貴美氏には悪いけど、今回も私の脳内では、橋本みつるの西条朱音と高岡尚と坂本君と藤谷直季とテン・ブランクでお送りされました。
あとがきによると、今後BIRZ NOVELSからそれまでの巻も改めて随時刊行されるらしいんだけど、んでもって恐らく藤田貴美のイラストで出るんだろうけど、個人的に橋本みつるがいいよ!と思う。はっきりいって、橋本みつるじゃないグラスハートなんて
要するになんで坂本君があそこで西条にプロポーズすんのかわかんない(皆わかってんのかな?ちょっと不安)。真崎桐哉とかわかりやすいのにな。あ、ちなみにオーバークロームのフルネーム空で言える[5]よ!
私なんかからすると、ファンタジー(主にオーラバスター[2]を指していると思われる)よりこっちのが断然面白かった。まあ「当時(中略)ファンタジーものが流行していて」という、時代の流れみたいなものもあったと思うけど。それに、書いていたレーベル(コバルト文庫)のターゲットが、こういう話よりファンタジーが好きな世代だったとか、そういうことも。
そういう時代背景があったのはあったとして、しかしそれを抜きにしても色んな意味で、ファンタジーよりグラスハートの方が出来がよかったと思うよ、当時も今も。
という理由と、それから一番最初のイラスト、橋本みつるの絵!!もうこれが圧倒的によかった。
若木未生の文章とか台詞とか展開の癖を見事に打ち消してくれる、強烈な個性のイラストだった。作者独特の表現はなくなったわけではないものの、橋本みつるの絵で読むと全然気にならなかった。[3]
もしグラスハートのイラストが橋本みつるじゃなければ、私は最後までこの作品を読むこともなく、こうして感想を書くこともなかったかもしれない。
というわけで、新イラスト担当の藤田貴美氏には悪いけど、今回も私の脳内では、橋本みつるの西条朱音と高岡尚と坂本君と藤谷直季とテン・ブランクでお送りされました。
あとがきによると、今後BIRZ NOVELSからそれまでの巻も改めて随時刊行されるらしいんだけど、んでもって恐らく藤田貴美のイラストで出るんだろうけど、個人的に橋本みつるがいいよ!と思う。はっきりいって、橋本みつるじゃないグラスハートなんて
間違ってるから。完全に。
とか言い切りたくなる。
あの1巻の表紙[4]のフジタニナオキ。
あれがグラスハートでしょ。
とか言い切りたくなる。
あの1巻の表紙[4]のフジタニナオキ。
あれがグラスハートでしょ。
前回までに、音楽至上主義やってんのに恋愛持ち込むな、スポ根にLOVEはいらんのじゃ、というような感想を持っていた。そんな記憶しかないまま、この『イデアマスター』を開いた。
しかし結局、音楽至上主義から恋愛という横道に反れたのではなく、音楽至上主義というテーゼの中で、西条が、他のみんなが、取り違えたり間違えたりしてる、そこからどう本道に持っていくか、ということを書こうとしてたんだな、と最後の方でわかりました。(作者の意図が本当にそうなのかは知らんが……)
そして藤谷先生は音楽のメタファーとしての存在でしかないんだね、この場合。
だから西条は、音楽に焦がれている同じ地上の人間の坂本君と結婚する、とかいうのかもしれない。
でもですね、この本を読んでいて、やっぱりよくわかんねえなあ、ってところが度々ありました。
それは若木未生独特の理論で展開している部分なんだと思うけど、加えて私がおバカなんだと思うけど、何がどうしてそうなるの?というところがあって、途中で理解を放棄しました。……大人になった証拠です。
結局、最後の最後で先生が西条のことを
「ドラム素人だったくせに、いきなりテン・ブランクなんて大変な場所で叩いた人だよ、天才すぎるよ」(p.239 傍点引用者)
と言っていて、あーそれ先生に言わせちゃうのか、そこへ持っていくのか、と思いました。
たぶん先生が西条を天才と言うのは最初で最後だと思う。もちろん1巻から先生を始め、音楽的最高潮ハイレベルな人々に囲まれて西条がTBやって、そりゃあ西条にも非凡な才能があるんでしょう、とそういうところは確かにあったけど、それくらいにしか書かれておらず、ダイレクトには言われていなかった。
なにか凄く全体的にけなし気味のことを言っている気がしてきたけど……
活動休止中に、ドラマーなのに西条がソロアルバム出す、という展開は、TBというバンドをうまく生かして変遷させていると思った。違和感なく順当に読めた。
文章が上手いとか下手とかはともかく(あっ!)、書き方は疾走感があるし、人間関係と世界観も上手く描かれていて(時々理解不能だけど)、面白いです。
あと、これはグラスハートが好きな人は、だいたい皆同じなんじゃないかと思うんだけど、西条が上の人に媚びないところがいいと思う。だから読めるんだな。西条の敬語っぽいしゃべりも、緩衝材になってると思います。
実際にバンドやってる人がどう思うのか皆目わからないけれど、音楽っていいよな、バンドとか仲間っていいよなって口に出さなくても読んでて感じるんじゃないだろうか。文字にすると一気に脱力しちゃうけど。
だから最後に、TBが活動再開する野外フェスのステージで、何でもないように藤谷先生が西条朱音の『海と黄金』を歌うシーンを読み終えて、ほっとしたような寂しいような嬉しいような、長編とかシリーズ小説を読み終えた時に感じる、特別な想いが湧き上がってくるんだと思う。
テン・ブランク(彼ら)はもう描かれずとも、この先も前に前進していくのだろう、と思う時、これぞ小説の醍醐味だと感じるし、結果的に読者にそう思わせることが、この作品の評価そのものだといえるんじゃないだろうか。
リアルさとか、視野とか、とりあず瑣末なことは全部無視して、音楽(バンド)を小説で描くことができた作品だと、私は思います。 んでもって、これから読む人には是非!!橋本みつるのイラストで読んでほしいです、強く!
notes
[1] 一昔前のコバルト文庫の代表作家。メインは漫画家マリナシリーズと銀ばらこと銀の薔薇騎士団なんだけど、KZっていう異色な感じの話が一番よかったように思う。マリナ全巻持ってますけどね。
[2] ハイスクール・オーラバスターというファンタジーがこの作家の代表作のはず。
[3] 私だけかなぁ?
[4] これ↓ですね。