大いなる眠り
フィリップ・マーロウの映画としては最も有名と思われる、“三つ数えろ(1946)”[1]の原作、『大いなる眠り』"The BigSleep" である。
ちなみにマーロウの一番の代表長篇といえば、やはり『長いお別れ』"The LongGoodbye" だろうか。この『大いなる眠り』ももちろん代表的な作品と言えよう。
ところでこの本はハヤカワ・ミステリ文庫[2]とは当然、訳者が違った。そうしたら驚きなことに、曲がりなりにも(失礼、)マーロウがかっこよく見えるのである!
今までは、人間的には当然としても、正直かっこいいとは程遠いイメージしか抱けなかったのに、今回はアウトサイダーで背が高くてかっこよく見えるのだ、ちゃんと![3]
訳者によってずいぶん違うものである。でも「モチ」にはちょっと驚いた……正直言って。古いからな、訳。でも「モチ」はないだろう、マーロウ……[4]
今回マーロウの心をとらえたのは、どうやらシルバーヴィッグことヴィヴィアン・リーガンだったようだけれど、とてもわかりにくかった。処女作ゆえだろうか。映画が「プロットが大変込み入っていることでも有名。」(by wiki)というのも、原作によるのだろう。
とにかく、話の流れはつかめたものの、状況の想像がいまいちしにくかった。[5]だいたい、カーメン・スターンウッドがバッド・トリップしてい、ガイガーが殺されているところにマーロウが乗り込むシーン、うまく想像できないのだ。想像力貧困といわれれば、それまでなのだが。
にしても、この『大いなる眠り』の邦題はすごくいいと思う。
"The Big Sleep"はほかにも訳し方があるだろうけれど、この「大いなる」というのがとてもいい。とくに、最後のシーンで初めて「大いなる眠り」というフレーズが出てくるけれど、まさに相応しい……そう、相応しい表現だ。
マーロウはスターンウッド将軍の「大いなる眠り」に一役買ったことだろう。
Original: "The Big Sleep"
notes
[1] 映画:三つ数えろ
[2] それまでマーロウはハヤカワ・ミステリで読んでいたのだが、今回は創元推理文庫だった。
[3] もちろんチャンドラーはそういう風に書いていたんだろう。
[4] 訳者か。
[5] アメリカ国民じゃないからだろうか?