光る源氏の物語
非常に興味深く、面白かった。
すごく不思議だなあと思ったのは、源氏が死んでから(光がこの世になくなってから)何かつまらない。この二人の対話がつまらないのではなくて、テクストの内容が変化して、それまでよりつまらなく感じる。これには驚いた。
だからテクストのいい「浮舟」なんてところは、宇治十帖でも読んでいて面白い。
作品の解釈が対談にダイレクトに反映される、それだけこの二人が素晴しい読み手、語り手であるということでしょう。
読み手の質が高いので、透明度の高いガラスのように、克明にその向こう側の物語を伝えることができる。加えてそのガラスの角度によって、ガラスを透さない時には見えなかった『源氏物語』の一面が、パズルを解いて行くみたいに浮き彫りにされてゆくのだ。
それにしても、この対談を読んでいるだけで「幻」「雲隠れ」の巻では、この世界から光の君(光)が消えゆく悲しみ、切なさ、空虚感、を感じる――源氏を死なせたくないとか、死んだらさみしい、という――それがこの物語の、紫式部という、聡明で、鋭敏な女性作者の力量というものなのだろう。
しかし、誰の訳で読むのが一番いいだろう? 丸谷は大野氏と一緒に訳を出してくれないだろうか?
そして絶対a系、b系、c系、d系で読もう。